フレームワークの使い方―戦略的、コンサル的、あるいは勝間和代的

今回以降は、前回見たような6つの「クルマの楽しさ」をどうアプリに組み込むかを考えます(だんだんと核心に迫ってきました・・・!)

・・・はずでしたが、予定変更。


今回はアイデア考案に役立つ「フレームワークの使い方」についてお話します。

フレームワークとは、


思考の枠組み・切り口


のことです。
それを使うことで、ダブリやモレがなく、全体感をつかんだ思考が可能になります。

もともとは戦略コンサルの分野の武器/技術であったフレームワークMECEの概念の効用を、古くは大前研一氏、最近では勝間和代氏などが一般のビジネスマンまで広く伝えてくれました。

このブログ上でも取り上げた「マーケティングの4P」や「消費行動のAISAS(AIDMAの現代版ですね)」などはフレームワークの典型です。


そして、僕がお話してきた「TOYOTA SOCIAL APP AWARD(トヨタ・ソーシャルアプリ・アウォード)でウケるアプリのポイント5つ」や「6つのクルマの楽しさ・おもしろさ」なども、広義のフレームワークだといえます(SWOTPPMみたいにかっこいい名前が欲しいな・・・)。


おさらいすると・・・

TOYOTA SOCIAL APP AWARDでウケるアプリのポイント

1.(最近いろいろなものから離れつつある)若者をターゲットにし

2.(可能な限り)後援企業のプラットフォーム上で動く/バッチリハマるかたちで

3.人と人がコミュニケーションしながらクルマの楽しさを再発見し

4.(トヨタ車関連の)リアルでの購買行動につながるような

5.ビジネスモデルを兼ね備えた

アプリ




★クルマの楽しさ・おもしろさ

1.選ぶ

2.持つ

3.いじる

4.走る

5.出かける

6.つながる






です(今のところ)。
アプリのアイデアを考える際に、この「枠組み」からスタートしたり、あるいはピピピときたアイデアの種がそれにバッチリハマっているかを確かめるのです。

いいかえると、このフレームワークの「使い方」としては、左脳的(ロジカル)にフレームを構成する諸要素をボトムから積み上げていく(ポイント①を具体化するとこうなって、②はこうなって、それらを組みあわせてこうなる云々)のもアリですし、右脳的(直感、直観)にひらめいたアイデアを当てはめてみて、ポイントに合致しているか、どこかカイゼンできないかと確かめるのに使うのもアリです。

抽象的なので、右脳的なアプローチについて具体的に。
たとえばスマートフォン用の「コップの水をこぼさないように走るアプリ」(エコ運転啓発を目的にトヨタが開発;http://www.aglassofwater.org/en)を『頭文字D』を読みながら思いついたとして、
「”6つのクルマの楽しさ”、とくに「走り」の部分に特化したおもしろいアプリだけど、「いじったり」「つながったり」する要素があまりないな。”ウケるアプリのポイント”に照らしてみても、そもそも車を持っていない若者向けでは全くないし、購買行動にもつながらないし、ビジネスモデルも見えないから、今回のアウォードにこのまま出してもあまりウケないかもな。」

と考え、


・リアル用だけでなく同じテーマでPC上で遊ぶ簡単なゲームアプリを用意する
・エコを謳う企業や商品とタイアップして景品を用意する(たとえばアプリ上のコップにブリヂストンの環境タイヤ”エコピア”のロゴが広告代わりに表示され、高得点者には景品としてエコピアが送られる)
・マイミク同士で協力する要素をいれる
プリウスの店頭試乗キャンペーンと連動させて、試乗中に高得点を出したお客さんにはクーポンをプレゼントする
・この「コップの水」アプリを皮切りにどこかの環境系NPOやメーカーとタイアップしてエコアプリシリーズをつくり、ブランド向上やCSRにつなげる


・・・などなど、アイデアを深化するのです(文字通り「思いつき」のアイデアフレームワークに当てはめて、足りない要素を補っていますね)。



別の(もっと堅い)例でいうと、大前研一氏が考案した古典的なフレームワークに競争戦略の3C(http://gms.globis.co.jp/dic/00039.php)というものがあります。

大雑把にいうと、企業の戦略策定の際には

1.company(自社)
2.customer(顧客)
3.competitor(競合他社)

の3者について分析し、自社のKSF・活路を見出すというもの。


これをホンダのハイブリッド車戦略に当てはめてみます(非常にシンプルにモデル化して)。


先ほど述べた「左脳的なアプローチ」では、まず3Cのフレームワークを前提とし、自社を取り巻く環境を

【1.自社】独自のハイブリッド技術があり、今後の成長戦略でもハイブリッドを重視している(電気自動車の技術は弱いし、重視していない)。
【2.顧客】環境意識の高まりや景気の悪化によって、高排気量のスポーツカーよりも経済的かつ環境にも優しい軽自動車やハイブリッド車へのニーズが高まっている
【3.競合】トヨタプリウスハイブリッド車の代名詞となっており、同じようなクルマを出しても負ける公算が高い

・・・云々と考えた結果として、
「ハイブリッド技術への投資拡大」

プリウスとはアプローチの異なるハイブリッド車・・・具体的にはよりシプルな技術で価格も安いハイブリッド車インサイトですね)や、スポーティーなもの(CR-Zです)を出そう」

という具体的な戦略にいたるイメージです。


逆に右脳的なアプローチでは、例えば開発者の「スポーツカーとハイブリッドの融合ってイケてるな・・」という直感がまずあって、そのアイデアに対してコンサルタントや経営企画部などの頭の固い(褒め言葉です)人から「3Cにあてはめてみると・・・」という(あまりおもしろくない)ツッコミが入り、

【自社】上のようなアイデアがあり、それを実現する技術や投資余力もある。F1やNSXS2000など「スポーツ」のイメージも強い。
【顧客】日本人はわかりやすいスポーツカーや高級車よりもエコや先進性を重視するようになっている。
【競合】スポーツ×ハイブリッドというコンセプトの車は、大手メーカーからは出ていないからチャンスだ(テスラのロードスターは似たようなコンセプトだが、1,000万円近くするため直接競合しない)。

と考えた末、開発・販売にGOがでるというイメージです。


ものっすごい単純化してますが、大枠はこんな感じ。


もちろん、完全にどちらかに偏ることはありえず、双方のアプローチが取られることが通常ですが、個人で企画やアイデアを考案するときも、右脳と左脳の両方、あるいは直感と理屈の両方をフルに活かし、補完し合うようにしたいものです。


・・・「フレームワークをつくり、それに当てはめる」という発想自体がすでに左脳的であるともいえますが、発想のスタートが単なる思いつきであれ理屈からのボトムアップであれ、その結論(ここではアプリのアイデア)の良さを人に理解してもらう(しかも企画書単体で)にあたっては、やはり「求められている要素はA、B、Cであり、このアプリはBは弱いがA、Cを高度に満たしている」といったような”理屈による説明”、あるいは”理屈による反論に耐えられる構造”が不可欠だと思うのです。


もちろん完璧なフレームなどありえませんが、皆さんも一つのヒントとして「ウケるアプリのポイント5つ」や「6つのクルマの楽しさ・おもしろさ」といったフレームワークをつかってください。
これからもアイデア考案を助けるようなフレームを自分なりに考え、公開していこうと思います。
・・・おかしいところはマネしないでください(笑)。