ウケるアプリのポイント②(可能な限り)後援企業のプラットフォーム上で動く/バッチリハマる part.3―怪盗ロワイヤルは「おもしろいゲーム」ではない?

3大SNSにバッチリハマった(流行った)アプリ・ゲームの例として、今回は、モバゲーから火がつきCMでもおなじみの「怪盗ロワイヤル」について見てみます。


怪盗ロワイヤルの概要 from  wikipedia



「ユーザーは怪盗団のリーダーとなり、ミッションを実行してお金($)を稼ぎ、他のユーザーにバトルを仕掛けてお宝を盗む。時には他のユーザーと仲間になり、アイテム(武器・防具・乗り物)やお宝をプレゼントし合い、協力プレイをする。最終的には、世界中のお宝を集めてコンプリートを目指す。」



というものです(もっと詳しくは、ググってください)。


このゲームのポイントは「ウインク」というシステムです。
「ウインク」とは、


他の盗賊にウインクをすることで、相手のプロフィールページにコメントを残し、交流を深めることが出来る。
ウインクをする事で連携ポイントが増え、そのポイントを使ってミッション要員を最大値まで回復する事が出来る。
同一ユーザーには1日3回まで実行可能(PC版は1日1回まで)。


というもの。
facebookのいいね!ボタンみたいなもので、「つながり」醸成のトリガーとなっています。


このゲームがウケた要因は、(過剰ともいえる広告による露出が引き金となり)典型的なソーシャルゲームのおもしろさを多くの人に知らしめたことにあると思います。
言い換えると、ゲーム内容そのものに画期性はそこまで無く、あくまで「流行るソーシャルゲームの基本」に忠実に作られているということです。

では、その「基本」とは何か?

それは、SNS上でのつながりを軸にした①人を誘う仕組み②繰り返しプレーさせる仕組みという2つの土台に、(圧倒的ではないにしろ、それなりに)優れたゲーム性が乗っかっている」ということです。
つまり、(ストーリーやシステム、映像やサウンドなど総合的な意味での)ゲーム性では、任天堂ソニーが覇権を握るゲーム専用機をプラットフォームとしたものに敵わないものの、「人を誘い、何回もプレーしたくなる”仕掛け”」が優れていることで、多くのユーザーを集めているということです。


はてな匿名ダイアリー「怪盗ロワイヤルについて」でも、このゲームの醍醐味の筆頭に「プレイヤー間の繋がり」を挙げ、下記のように説明しています。

ミッションをクリアしたり、他プレイヤーを仲間にすると「手下」3人が増える。
この「手下」をお宝の攻撃・防御に配分するのお宝攻防の肝となる重要な要素で、仲間は増やすほど有利(レベルごとに仲間上限がある)

また仲間はミッションクエストで駆けつけて応援してくれたりもする。逆に仲間と縁を切ると「手下」が5人減るペナルティがある。

仲間プレイヤーに「ウインク」機能でメッセージを送ると自分の「手下」が回復する機能があり、これによってプレイヤー間に絆を作ることにゲーム上のメリットを作っている。仲間を外させることにペナルティがあることもあって、仲間が増えるほどゲームをやめにくくなる効果があるのかもしれない?

お宝を相互に交換するトレードする機能はなく、一方的にプレゼント機能しかないため、仲間の間で効率よくアイテムを交換して進めるという手は使えない。
基本的にはダブった親愛の証としてお宝を配ることで仲間との関係性を強化するためにあると思われる。またお宝をプレゼントできるのはシリーズのうち5種類未満しか揃ってないものだけで、プレゼントだけでコンプリートはできないようになっている。

このSNSコミュニティとゲームが噛みあっているゲームデザインはなかなか絶妙だと思う。





ネトゲ廃人』という本に出てくる”現代の廃人”の一人が、オンラインゲーム上の連帯感について「私が眠る(ログアウトする;筆者注)と、みんな死んじゃう」と述べています。
ここまでのめりこむ人が出てくると社会問題化してしまいますが、「ゲームの内容・仕組みによってここまで連帯感を醸成できる」という事実は、ソーシャルアプリやそれを軸としたビジネスを展開する上での大きなヒントといえます。

ちなみに、怪盗ロワイヤルの開発者であるDeNA大塚 剛司氏は次のように語っています。
http://careerzine.jp/article/detail/1021



■――「怪盗ロワイヤル」はソーシャルゲームとして大成功を果たしていますが、それを生み出すのに苦労はありませんでしたか。


実は私自身、あまりゲームで遊んだことがなかったんです。ですので、いきなりゲームを作ることになって当惑しました。まずは情報収集ということで、Facebookやその他のオンラインゲーム、また、PSPやDS、iPhoneを買って、色々なタイプのゲームをやり込みました。その中でいくつかの海外発のゲームがヒントとなり、ソーシャルゲームはこうあるべきなんじゃないかという構想が固まりました。それが、「怪盗ロワイヤル」につながっています。


■――ソーシャルゲームが今後どのようになっていくとお考えか教えてください。との問いに対して

ソーシャルゲームというのは、ひとりで遊ぶ普通のゲームと性質が異なっています。ゲームそのものの面白さと、人とつながることの面白さがバランスよくミックスしないと、意味がないということです

つまり、開発している最中は、ついゲーム単体の面白さを高めようと走ってしまいます。しかし、実はゲーム自体の面白さが突出していると、ひとりで遊べばよいゲームになってしまい、ソーシャルゲームとしては失敗です。人とのやり取りをすることの面白さという要素が必ず入っていなければならないのです。その両方をバランスよく伸ばしてあげる必要がありますね。



いわゆる「ゲーマー」ではまったくなかった大塚氏が、「ゲーム単体として過度におもしろさを求めるのではなく、人とつながること」を重視して生まれたのが、大ヒット”ソーシャルゲーム”である「怪盗ロワイヤル」なのです。

TOYOTA SOCIAL APP AWARD(トヨタ・ソーシャルアプリ・アウォード)でウケるアプリも、同じような性質のものではないでしょうか。