ウケるアプリのポイント②(可能な限り)後援企業のプラットフォーム上で動く/バッチリハマる part.2―mixiにハマるアプリとは?

それでは次に、既存のソーシャルアプリ/ソーシャルゲームの中で、mixiGREE・モバゲーの3大SNSにバッチリハマッている(流行っている)ものについて分析します。今回はmixiです。

mixiで流行ったソーシャルゲームの代表格といえば、「サンシャイン牧場(通称サン牧)」です。
こちらはまずmixiで大ブームとなり、その後モバゲーにも採用されたソーシャルゲームで、一言でいうと「牧場シュミレーション」です。

【ブログ「ガジェット通信」によるゲームの概要】
http://getnews.jp/archives/31743

スタートすると、畑の画面といくつかのアイコンが表示されます。基本的なゲームの進行は「種まき→収穫」といういたってシンプルなもの。収穫した作物を売ることで大幅な経験値とゴールドが得られレベルアップしていくという流れになります。
実は種をまいてから収穫時間まで放っておいても作物は育ちます。このアプリでは、自分のマイミクさんの畑に出かけて、「水やり」や「虫の駆除」といったお世話をしたり、逆に「虫の投入」といったいたずらをしたりすることが可能なのです。もちろん、実った作物を少しいただいたりということもできちゃいます。よって、マイミクさんとの畑を通した交流のほうがこのゲームのメインとも言えるでしょう。



サン牧が日本で最も流行ったソーシャルゲームの一つとなった理由は何でしょうか。Rekoo Japan(この「サン牧」、実は中国のRekoo Mediaという会社が作り、その日本法人が国内のSNSで展開しています)の代表取締役の小野裕史氏は、ASCII.jpの記事上でこう語っています。



サン牧成功の理由は「(市場に)先行したことと、取り上げたテーマ自体が『水をあげて農作物を育て、収穫する』という、誰もが直感的に分かる簡単なものだったこと」と小野氏は分析する。コアなゲーマーでなくても楽しめるため、ゲームをやったことのない層に受け入れられたのがポイントだという。「実際、Rekoo Media CTOの祖母がサンシャイン牧場のコアユーザーなんです。幅広い年齢層にウケている証拠でしょうね」
 もう一つのポイントは「誰もがハッピーになるゲーム」ということ。「虫入れ」はただのいたずらではなく、結果的に相手の増産につながる行為。ウォーゲームのような競い合いのゲームとは一線を画している。「一般的なゲームには競い合いをするものが多いが、多くの人に長く愛されたいと考え、みんながハッピーになれるこの形態にしています」


ソーシャルゲームとはなんぞやとの問いには、


ソーシャルゲームと、これまで一般に「ゲーム」と呼ばれてきたパッケージのゲームの違いについて小野氏に聞いてみると、「ソーシャルゲームはコミュニケーションの一形態であり、言葉が要らないコミュニケーション」という答えが返ってきた。そして「ソーシャルは出してからが勝負」なのだという。それはどういうことなのか。
 ゲームは作るまでが100%だが、ソーシャルは作るまではごく一部で、残りの運用が鍵を握る。運用してユーザーに楽しんでもらうまでが開発なのだ。
 パッケージの場合はすでに完成しているので、クリアしたりコンプリートしたりしてしまうと、やることがなくなってしまう。一方のソーシャルゲームは、定期的にイベントを仕掛けたり、新しい機能やアイテムを追加するなど、運営次第でいくらでも盛り上げられるのが面白い。
 ただし、「ソーシャル性のバランスは非常に難しいんです。ただマイミク同士がからめばいいわけではない。ユーザー同士が競い合えるランキング制があるだけでソーシャルと勘違いしてはいけないと思っています」(小野氏)

とのこと。


さて、mixiにバッチリハマって大流行したアプリの例としてサン牧を取り上げましたが、僕はこのゲーム/アプリが「mixiで流行った必然性」は、そこまでない気がします。
すなわち、mixiの特徴である「リアルに近いつながりがバーチャルでも展開されている」という点とサン牧のゲームシステムには、あまり関連性がないということです。


・・・というより、ちょっとググってみると「マイミクの畑にいたずらしまくったら、人間関係が壊れた」みたいな記述も散見されるので、むしろ「リアルなつながり」は邪魔になる場合すらありそうです。


では逆に、“mixiだからこそ”ハマるソーシャルゲーム・アプリって、どんなものでしょうか。

mixi笠原健治社長はこう語っています
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1002/08/news060.html


GREEモバゲータウンのゲームと混同されることが多いが、mixiアプリは明らかに、別の市場を狙ったもの

GREEやモバゲーの友人関係は、ゲームを核に集まり、見知らぬユーザー同士がつながりやすい「バーチャルグラフ」であるのに対し、知り合い同士のつながりが多いmixiの「マイミクシィ」(マイミク)関係は「ソーシャルグラフだと笠原社長は区別。前者は既存のオンラインゲーム市場で戦い、後者はソーシャルゲームという新市場を開拓していくという。

GREE・モバゲーのゲームとmixiアプリでは、一緒にプレイする相手が異なるという。GREEやモバゲーのゲームは、見知らぬユーザー同士でプレイし、ユーザー全体でランキングを競うものが多いが、mixiアプリが目指しているのは、友人などマイミク同士の交流の一環として楽しめるゲームだ。 例えば、GREEで人気の釣りゲーム「釣りスタ」は、さまざまな魚を釣り、「釣り図鑑」を充実させたり、ユーザー全体での点数ランクや「○○段」など称号を競うゲーム。見知らぬユーザーとのチームプレイも可能だ。「釣り図鑑を充実させたい」というコレクション欲や、「ランキング上位に入りたい」という欲望がプレイヤーをかきたてる。
一方、mixiアプリで一番人気の「サンシャイン牧場」は、ユーザー全体で競い合うのではなく、マイミク(友人)と一緒に楽しむ設計。ランキングもユーザー全体ではなくマイミクのものだけを表示し、マイミクと作物を世話し合ったり取り合ったりできる。「マイミクの○○さんが水をやってくれたから、お返しに○○さんの畑で虫をとってあげよう」「○○さんに作物を取られたから取り返そう」など、マイミクとの交流がプレイを活性化する。
 ■DeNAはモバゲーとmixiアプリ両方で「怪盗ロワイヤル」を提供しているが、両サイトでつくりが異なる。モバゲー版は見知らぬユーザーとプレイする機能が充実しているが、mixi版ではマイミクとの交流機能を重視。マイミク同士でチームを組んだり、プレゼントを贈りあうことができる。
mixiアプリが挑むのは、友人や家族とのコミュニケーションの1つとして、誰もがライトに楽しめ、長くプレイし続けられるソーシャルゲームという新市場だ。「mixi日記のようなゲームが理想」で、市場開拓には時間がかかるとみている。


なるほど。ちょっと引用が多くなりましたが、青字で協調した部分は非常に示唆に富んでいます。

先に僕は「mixiの特徴である「リアルに近いつながりがバーチャルでも展開されている」という点とサン牧のゲームシステムには、あまり関連性がない」と述べましたが、mixi笠原社長からはピント外れだといわれてしまうかもしれませんね。

たしかに「いちゲームとしてのブーム・利用者数の増加」や「課金による売り上げ拡大」のみを至上命題とするのであれば、匿名かつもともとゲーム好きの人が多数集まるモバゲーなどのSNSのほうがプラットフォームとして適切といえますが、mixiはあくまで「コミュニケーションの促進ツール」としてゲームを捉えているというのです。

したがって、我々がアプリのプラットフォームとして特にmixiを選択する場合には、笠原社長のいう「ソーシャルグラフ」を活用しない手はない のです。逆に言うと、「ソーシャルグラフ」を上手く活用できず、純粋にゲーム性のみを追及したアプリであれば、他のSNSを選んだほうが親和性は高いでしょう。


イデア考案の時には、是非「このアプリにmixiソーシャルグラフを活用できないか?」という視点を持つようにしましょう。その視点がないと、mixiの担当者が唸るようなアプリにはなりえません。