マトリックスで考える―賢い人も、ウケるアプリを思いつく人も

それでは、今回から「クルマの楽しさ・おもしろさ6つ」をどうアプリに組み込むかについて考えます。

各論に移る前に、まずは「考え方」を共有するために(また前置きかよ!)、前回お話したフレームワークに関連して、「アプリ考案マトリックス」を紹介します。
フレームワークは「考え方の枠組み」のことだと前回説明しましたが、マトリックスはその形態の一つといえるでしょう。
マトリックス(あるいはマトリックス図)の堅い定義は「行の事象と列の事象の交点の要素でその両者の事象の関連の有無を示すもの」です。

有名なマトリックスに、『7つの習慣』で提唱された「時間管理のマトリックス」があります(間違いなくキアヌ・リーブス主演の映画のほうが有名ですね)。




その概要は、上図の通り縦軸を重要度、横軸を緊急度として、4つの象限(ハコ)をそれぞれ
①緊急で重要
②緊急ではないが重要
③緊急だが重要ではない
④緊急でも重要でもない
に分けて管理し、特に「②緊急ではないが重要(例えば大きな目標達成に向けた毎日の勉強や、家族との良好な関係の構築など)」な事柄に注力すべしというものです。

「デキる人は図とマトリックスで考える」といわれますが、モレもダブリもなく全体感をつかむことで、アイデアの考案や注力すべきポイント・改善点の炙り出しができることがその理由でしょう。


そして、そのマトリックスTOYOTA SOCIAL APP AWARD(トヨタ・ソーシャルアプリ・アウォード)のアプリ考案用(あるいは「クルマの楽しさ」と「アプリの楽しさ」をニアリーイコールにするため)に考えたのが、「アプリ考案マトリックス」と以下で紹介するその使い方です。

構造と使い方は単純。縦軸を「リアル」と「バーチャル」、横軸を「快を増やす」と「不快を減らす」としたマトリックスを、「クルマの楽しさ6つ」に当てはめるだけです。

紙に書いてみてください。


縦軸について。
もちろん何らかのアプリを使う時点で「100%リアル」ということはないですし、かといって「クルマの楽しさを伝える」ことを目的とする以上、あまりバーチャルに傾き過ぎるのもいけないでしょう。しかし、大前提として「若者はそもそもクルマを持っていない」ので、どうしてもバーチャル寄りになるのは避けられません。

イメージとしては、iPhoneやPC内で完結しているレースゲームアプリはバーチャル寄りで、前回紹介した「コップの水アプリ」やカーナビ系のアプリは「運転中に使うこと」が前提なので、リアル寄りといえます。

次に横軸について。
こちらは「あらゆる(顧客が対価を払う)商品やサービスは、”快の増幅”か”不快の軽減”を提供する」という考え方に拠っています
たとえば「クルマを買う」ことは、ドライブをしたり走りを楽しむという点では「快の増幅」ですし、「電車通勤がいやだから車通勤をしたい」という場合は「不快の軽減」でしょう。


クルマに関するアプリを例にとれば、ゲーム系は「快の増幅」、コインパーキングサーチや給油記録などは「不快の軽減」です。
TOYOTA SOCIAL APP AWARD(トヨタ・ソーシャルアプリ・アウォード)の趣旨は「クルマの楽しさを若者に伝える」ことなので、「快の増幅」に偏るのは間違いありません。



以上説明したように、縦軸の上を「リアル」、下を「バーチャル」とし、横軸の左
を「快を増やす」、右を「不快を減らす」とすると、左上のハコから時計回りに


①リアルで快を増やす
②リアルで不快を減らす
③バーチャルで不快を減らす
④バーチャルで快を増やす

となります。



簡単に既存のアプリがどこに当てはまるかイメージすると、

①「コップの水」アプリ・・・こぼさないように頑張ることで運転が楽しくなります
②カーナビアプリ・・・ドライブ中に道がわからなかったり渋滞にはまるストレスを軽減
③中古車検索アプリ・・・有料で、分厚くて、重くて、検索しづらい中古車雑誌(僕は嫌いじゃないです)を読むストレスを軽減(リアルに近いバーチャルです)
④レースゲーム・・・リアルではクルマを持っていなくても、フェラーリを画面上でぶっとばし、無駄にランボルギーニに体当たりしたりするとスカっとするかもしれません(安全運転を心がけましょう)

といった感じです。


次回は、”アイデアを考える際になぜ「アプリの考案マトリックス」を「クルマの楽しさ6つ」に当てはめるのか”という疑問に応えるところから始めます。